SDA王滝参加記

言わずと知れた、MTB界のメジャーレースである「SDA王滝」というイベントに参加してきた。参加決定のきっかけは自分の意志ではなく、近所の自転車屋さん、サイクルセンター吉岡の副店長さんと、共通の友人の女性にお誘いを受け、参加することにした次第。正直、いつか出てみようと思うくらいの漠然とした希望ではあったところを、背中を押された感じだ。

ダート走行メインの自転車イベントへの参加は、私としては初体験でとなる。とは言っても、学生時代はランドナーでダート三昧だったし、今でもオフロードバイクで林道は走っているので、ダートそのものに対する不安はない。問題は、いままでで最も長いレース距離となることである。

この手のイベントは等しく前日受付である。土曜日の朝こちらを出て、会場到着は13時ごろ。受付は14時からなので、会場内を散策する。会場となる松原スポーツ公園は、おんたけ山の麓に広がる広大な公園である。その中心部には巨大な多目的ドームがあり、そこがイベントの会場となっている。さすがにメジャーイベントらしく、MTB関連のブースの数も多く、にぎやかである。また、周りには飲食店がなく、駐車場泊の選手も多いことからか、飲食店のブースもあり隙がない(笑)。

私が魅惑の格安グッズにドキドキしている間も、吉岡の副店長さんは、あちこちで業界関係者や知人との交流に余念がない。私みたいに完全遊びで参加しているわけではないですからね。受付を済ませて、遅めの昼食を取り、前日のイベント、ファンツーリングに参加していた友人と合流。自転車を組んで友人の軽ワンボックスの中に3台収納。これで明日の朝は、からだ一つで会場入りすればよい。程なくして、いつも乗鞍で一緒に走っている、学生時代の後輩2人に合流。彼らは、100キロに参戦する猛者なので、年は下だが、王滝においては経験豊富な先輩だ。

そして今日のお宿は、おんたけ休暇村。参加決定当初は車中泊を予定していたのだが、少し前に後輩たちからLINEにて同泊のお誘いが来たので、こちらへの宿泊を決めたという私らしいノープランぶりだ。やはり宿に泊まった方が、心も体も休まる。個人的に、ここ数週間仕事がハードだったので、このお誘いはうれしかった。おんたけ休暇村は建物こそ古いものの、中は清掃が行き届き、とても快適な宿で、食事も美味しかった!夕食後にちょっとアルコール消毒をして、早めに就寝。翌朝は3時過ぎに起床し、朝食を取る。早朝なので、朝食は宿のお弁当(おにぎりセット)なのだが、100キロ参加の猛者たちはプラスカップラーメンだった。これには後から、なるほどと思うことになる。私はと言えば、なんだか食欲がなく(そういえば結構飲んだ…)、宿でおにぎり1個、スタート前に菓子パンを少しかじっただけだ。

各カテゴリーのスタート地点は異なっており、私の参加する42キロはスポーツ公園から11キロほど離れた、釣きち溪谷?だったかそんなところなのだが、何しろ遠い。ツーリングペースでスタート地点に着くと、すでに長蛇の列ができている。しかし、競技のタイムは計測タグによって決まるので、どこから出発しても大丈夫だ。まあ、いつものイベントよろしく、ほぼ最後尾に陣取るのが自分流だ。

情けない感じのホーンが、スタートの合図。続々と参加者が飛び出していく。スタート地点から少し走ったところから計測が始まる。少し速度が乗ってからの計測開始なのは、競技目的の人にはうれしいことだろう。そこからダートの入り口までは、いわゆるリエゾン区間のようなもの。ぼちぼちのペースで、ゆるゆる走っていく。なるべく普段の練習のペースくらいで走れるように先行者を選択し、必要に応じて乗り換えていく。ダートに入ってからが、本当のスタートだろう。

数名のオフィシャルの方が誘導しているところが、ダートの始まり。勾配率は突然きつくなる。ここからは最初の長いのぼりのはずだ。路面の荒れは想定内、この程度なら、今回使用しているハードチューブ入りのセミブロックタイヤで十分だ。グリップも良く、トラクションもかかりやすいし、何しろ普段使っているタイヤなので、勝手知ったる何とやらである。前情報として聞いていた、上りはじめの団子状態もさほどではなく、速い選手の気配がしたら、道を譲るように心掛けた。自分の体の調子もすこぶる良く、足も良く回る。今までにない感じだ。ピークからは長いダートの下りなのだが、ここは少々予想外、砕石を敷き詰めた深砂利区間がある。これは今回のタイヤと、幅の狭いハンドルでは分が悪い。逆に、大きくえぐれた荒れた路面の方が私好み。無理もできないので、得意のダートの下りでは、あまりペースを上げられなかった。42キロのコースにはCPは30キロ地点の1か所しかなく、そこを3時間以内にクリヤーすることが完走の条件だったと思う。そこまでには確か1か所ASがあったと思うが、あまりにも快調なのでパスしてしまった。それも、後で効いてくることになる。

30キロ地点のCPでは停止し、水を2杯飲む。ここまでのタイムは、2時間10分くらいか。今までの自分では考えられないペースだ。「あと12キロか、頑張ろう」とスタートするも、ここからは多くのアップダウンが、足を削っていく。

ほとんど止まることはないのだが、いつのまにか同じようなメンツと抜きつ抜かれつの状態になっているのがおかしい。そこそこの長さを下ると、左に鋭角に曲がる指示が出ている。何とか減速し左折すると、ダートの激坂がお出迎え。あとから知ったが、ここは20キロコースの5キロ地点らしい。ギヤを落とす距離もないので、「押し」の一択だ。押して上っていると、「うわっ、来やがった!」。実は前の下りから違和感があったのだが、足が攣ってきた。両足同時の最悪な奴だ。燃料切れより先に、ドライブトレインの故障である。取り合えず、上り途中の湧水でバンダナを冷やし、痙攣を止める。

ここからは、ほとんど乗ることができない状態が続く。勾配は大したことはないが、クランクを回す動きをすると攣ってしまうので、飛び降りてうずくまる。この繰り返しだ。そうこうしているうちに、暑さも手伝い、燃料も切れた。ハンガーノックだ。血糖値の回復を待って、押したり乗ったりを繰り返し、もはや得意の下りも下れない始末。ブレーキをかけながら、徐行して下る。さっきまでいたメンツには全員に抜かれただろう。吉岡さんにもどこかで抜かれたらしい。途中、貧血で倒れそうにもなった。

それに追い打ちをかけたのが、大ウソつきの距離表示。ふらふら歩いていると、「42キロ、残り2キロ」の標識。あと2キロなら、このまま押しても何とかなる。しかし、その先には「100キロ、残り10キロ」って、なんで? 更に、「20キロ、残り10キロ」だから、何でって!!

3時間近くあった余裕も、押して歩いていては、あっという間に売り切れてしまう。最後のピークを越えたあたりから、長い下りが始まる。また深砂利だ。地図は見ていないが、山の感じからして、ここからすべて下りのはずだ。残り時間は30分を切っているので、乗って下る。途中、強烈な石はねを食らい、右弁慶を強打&流血。止まってみたところで、何もできるわけではないので、無視して下る。ゴールすると、アナウンスで何分だとか言っていた気がするが、5時間を切っていたことだけしか覚えていない。取り合えず、完走はした。

結果、私はギリギリ5時間切り、友人はDNFという残念な結果であったが、吉岡さんは年齢別3位に入るという素晴らしい結果であった。

距離が長かったとは言え、この手の競技でこんなに疲弊したのは初めてだ。思考もぼやけているし、足も痛いし、背筋も痛い。もうボロボロである。ゴール直後は歩くことすらままならなかった。3日後の水曜日ですら、まだ回復には程遠い感じだ。今回の王滝への参加は、いろいろ課題がありすぎて考えるのも嫌な感じだが、カーボンコントロールと、足攣りの対策を怠っていたのが最大の反省点となるだろう。

しかし今回も、自転車だけは完璧に機能してくれた。かなり汚れてしまって、ご機嫌ではないが、直前に戻した、30年来の友人である皮サドルには本当に感謝だ。お尻は全く痛くない。そろそろ引退させてあげたいのだが、ここぞというときには、毎回世話になってしまう。次はタイヤをスリックに戻して「美し」だ。もう少し、よろしく頼む。

 


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