” Lee Oskar (約束の旅)” Lee Oskar

ハーモニカ、ブルースハープ、どちらも同じ楽器である。しかし、ポピュラーの世界で、それ専門のアーティストというのはきわめて珍しい。

リーオスカーはデンマーク出身のハーピニスト(ハーモニカ奏者のことをそう言うらしい)。ウォー(Warという物騒な名前のバンドだが、ちゃんとした意味がある)の立ち上げメンバーの一人でもある。バンドの結成は、1960年代であり、私のリアルタイムにしては早すぎる。もちろん、リーオスカーもウォーも聞いてきていない。このアルバムは1976年頃の発売。美しいジャケットは聞くものに期待を抱かせるが…はたして?

軽く盤をクリーニングして、針を落とす。僅かなスクラッチノイズに続き、効果音の足音。その後に、か細く泣くような音が立ち上がってくる。ん?、この音がハーモニカ!?なのか?

私の記憶の中のハーモニカは、ブカブカと連続した和音しか発することができないブルーシーな楽器。それはまさにブルースハーブという呼び名がふさわしい。ハーモニカとはこんなにピンポイントな音を出せる楽器なのか?というのが、最初の印象。ともかく私の知っているハーモニカの音ではない。繊細で澄んだ音色が、控えめにバンドを引っ張って行く。一般的なポピュラーミュージックの中の情熱的なブルースハープとは違い、何とも心地よい音。A-2には資生堂のCMに使われた曲も入っている。曲だけではわからなかったが、U-TUBEで当時の動画を見て繋がった。曲間のノイズすら待ち遠しく、次はどんな音が飛び出すのか、わくわくしてくる。レコーディングも素晴らしく、楽器の分離も極めて良い。このブログを書くまでに、4回ほど通しで聞いてしまった。こんなことは近年なかった。久しぶりに良い盤に出会えた。