GSXR750 J の帰還

3年ほど前に、お客様に熱望されて放出したGSXR750(88年式J型)が私のもとに帰ってきた。個人所有の車両で、しかもたっぷり古いので、あまり売りたくはなかったが、ごく親しいそのお客様がどうしても欲しいということで、やむなく放出したのだった。そのお客様には、もし手放すのなら他には売らないでほしいと伝えてあったので、今回の出戻りとなった。

我々が敬意を込めて、「J」と呼ぶこのGSXRは30年前のレーサーレプリカだ。1988年式は「J」、89年式は「K」、このアルファベットは、メーカーが付けた一文字のイヤーコードのことである。この2年間に販売された機種だけが、ホモロゲーションマシンのGSXRR(K)を除けば、ショートストロークの油冷エンジンを搭載したモデルになる。人気はないのだが、知る人ぞ知る?昔の名車である。当時は、その前の初期型と比較されて、「低速トルクがない」などと揶揄されたものだが、そんなことはなく、必要十分なトルクであった。むしろレーサーレプリカには低速トルクなどいらないのだが、メディアというものはえてしてそういうものだ。

帰りを待っていたキーホルダー。

この年式の特筆すべき点は、すばらしいエンジンと車体とのマッチングだ。実際、30年近い私のバイクライフにおいて、これほどのバランスを持ったバイクは他にはない。15年ほど前に、長年欲しかったこのJ型をようやく手に入れ、完全なフルノーマルに仕上げた自慢の一台だった。おそらくは、国内でも1、2を争う美しい個体であったと自負している。

しかし、そのお客様は、渡した直後にミニサーキットで転倒。その時は、廃車も視野に入れざるをえないようなひどい状態だったのだが、とりあえず走れるように、何とか修復したのだった。幸いにも、お客様自身は無事であったことを付け加えておく。それでも、そのお客様はバイク自体は気に入っていてよく乗っていただいたが、劣化の速度はすさまじいものであった。まあ、売却したわけであるので、私にとやかく言う権利はないのだが、そのお客様とは、バイクに関する物差しの目盛が大幅に違っているということに、私が気が付かなかったのだ。

マフラーはノーマルではなくなってしまった。それでも、このJ用のサイクロンは貴重品だ。

おかげで車体は満身創痍、見るも無残な状態での帰還となった。帰還してからは、しつこく洗車と修正を繰り返すことで、まあまあ見れるくらいの状態までには回復できたと思う。先日は、帰還後初のツーリングにも行ってきた。ターンパイク、伊豆スカイライン、石廊崎線、マーガレットラインと走ってきた。やはりこのバイクは、峠道が似合う。ここから、また長い道のりの初期化作業が始まる。目指すは、日本一美しいJ型だ!


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です