ヒルクライム佐久参加記~新たなる黒歴史~

私のヒルクライムへの挑戦は、「参戦」ではなく、「参加」である。そして、現在の自らの自転車力の「確認」でもある。今年は参加しなかったが、昨年までの乗鞍では、MTBで参加してきた。今回の佐久は、フォールディングバイクのカラクルで出ることにした。私は古い自転車乗りなので、機材の性能にはあまりこだわらない。私くらい底辺の自転車乗りになると、どんな自転車に乗っても、結果は同じである。であるから、参加する自転車は、所有しているMTBかフォールディングなので、毎回が「背水の陣」ということになる。

というわけで、ここからヒルクライム当日のお話。写真も少なく長文です。

saku002ヒルクライムの集合時間は朝の6時半。昨夜もよく寝られたので、早起きも全く苦にならない。前日走行の疲労の残りもほとんどなく、むしろ調子がいいくらいだ。朝食は、前日買っておいたパンを豆乳で流し込んだ。

集合場所の野沢会館は、なかなかの賑わい。昨日の閑散とした状態が嘘のようだ。私が参加するのは「ロード男子C」のクラス。乗鞍同様、ここ佐久でも、最大勢力の200人越えの参加者がひしめいている。総参加者は600人以上らしい。初回のイベントとしてはまあまあなのか?ステージ前では、ゆるキャラの「佐久の鯉太郎ミニ」なる異星からの物体が、動き回っている。口の中に、金太郎のような子供が入っているのが不気味である。食ってるのだろうか?

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私のカラクル(下)とむらよし君のランドナー(上)

ボンヤリしていると、声をかけられた。何と、乗鞍仲間のむらよし君だ!彼は、各地のヒルクライムにランドナーで挑み続ける剛脚の男。ここ佐久にも、ランドナーで参戦だ! ほどなくして合流した女子部のお二人は緊張気味の様子。1人は女子Bにエントリー。「女子Bは9人しかいないから、6人抜けば表彰台だよ!」といらんプレッシャーをかけてみる。でも、もしかしたら行けるかも?と思わせるような仕上がりのはず?もう一人はシャフトドライブのミニベロで、ショートコースにエントリー。ショートなので、気負わずに行けば、問題ないだろう。

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待ち時間は長い!

開会式が終わると、出走地点までパレードラン、と言う名の単なる移動。出走までは30分以上ある。気温はそれほど低くはないが、ひざは確実に冷えてしまうので、うろうろと歩き回る。スタート地点では、また別のゆるキャラがいるらしい。放送で「ハイぶりっ子ちゃんが云々~」?て連呼してるけど、何じゃそりゃ?遠くて見えない。

そうこうしているうちに、やっとチャンピオンクラスのスタート。いきなりの急坂を、ペースカーに追いつきそうな勢いで加速していく選手がおり、待機の参加者から歓声が上がった。いったい、何を食べたらあんなに加速できるのだろうか?私のカテゴリーには有名なウォーリーさんもいた。相変わらずの、シングルスピードのままチャリである。

8時15分になり、我々、ロード男子Cもスタート。もとより、邪魔にならないように最後尾に近いところからスタートしているが、少しすると後ろのカテゴリーの選手にも、バンバン抜かれる。ママチャリのウォーリーさんも、まるで買い物にでも出かけるようなスムーズな走りで、急坂を登って行く。いつもどうりの私のスタートは、こんな感じである。今日もペースは遅いが、ひざはよく回る。コース序盤では、沿道にお住まいの方だろうか、声援をくださる。本気のロードばかりの中に小径車は目立つらしく、けっこう人気がある(笑)。生活道路を止めてのイベントであるので、頭が下がる。声援にもお答えして、愛想だけは振りまいておく。別荘地を抜け、ショートコースのゴールを過ぎると、乗鞍同様、いつもの一人旅が始まる。

コースが進むと、沿道にはオフィシャルもほとんどいないし、チェックポイントも微妙な感じ。いつもどうりのペースで頑張って走っているのだが、フルコースに参加の女子にも抜かれてしまった。私の前後10台くらいが、最終集団らしい。この集団の微妙なペースが楽しく、じわじわ前に出たり、下がったりしながら進んでいく。

さて、コースも終盤に近づき、残り4キロの最終チェックポイントに差し掛かる。と、前に数台の自転車が止まっている。私も停車する。「ここまでで、終了です!」とオフィシャルの声がする。皆、きょとんとしている。チェックポイントの看板を見ると「制限時刻10時20分」の文字。今は?27分!ようやく事態が把握できた。人生初のタイムアウトである。しばし、呆然。他の参加者も、順次状況を理解していく。ものすごく不快な空気が立ち込める。私は他に乗鞍にしか出たことがないが、ここまで制限時間が短くはない。タイムアウトにかかってしまうのは、車両トラブルや、肉体的な限界に達してしまった場合くらいだと思っていた。思えば、それが浅はかであった。制限時間など見てもいなかった。自転車は回収され、ゴールへと運ばれる。われわれは観光バスでVIP待遇。かなりの人数が回収された。しかも、下りも走らせてもらえない!これには参った。下りのバスの中は、囚人護送車よろしく、恐ろしい怒りのオーラが渦巻いている。

今回のタイムアウトは、「お前ら、おせーからもう来んな!」と言われたと同じこと。ガチでへこんだ。

さて、こうして私の黒歴史に、新たなる黒光りした1ページが加えられたわけである。乗鞍に始まり、今年は踏んだりけったりの、人生最悪自転車年決定である。まあ、すべて自爆だから笑うしかない!

せっかくだから、閉会式の様子も書いておこう。まずは、表彰式。トップの選手は1時間少々で上ってしまったらしい。全く、どこの星の出身なのだろうか!各カテゴリー別に、3位までの表彰と特別賞の授与が行われる。開始時間が遅れた影響もあるが、なかなかに時間がかかる。そのあとは、お楽しみ抽選会。アイテム数が多く、抽選をゆるキャラにお願いしてるので、さらに時間がかかる。ここで、ハイぶりっ子ちゃんの正体が判明。小海線のハイブリット車両をモチーフにしたゆるキャラとのこと(佐久市非公認らしい)。かなりの低予算で作成されたと思しき、電車に耳が生えたかぶりものと、悩殺ボディーに全身タイツをまとった、セクシー路線のゆるキャラである。これには、鉄男くんたちもたまらんだろう。今日は2両編成とのことで、2人?来ていた。会場はかなり暑かったので、いないとは思うが、「中の人」は大変だったであろう。

時間がかかるもう一つの原因は、プレゼンターに市のお偉いさんを、たくさん呼んでること。市長、議長にヒルクライム名誉会長?最初のイベントなのに、早くも、名誉会長なる方がいらっしゃる! まあ、そのうち市役所の掃除のおばちゃんまで出てきそうなプレゼンター軍団であった。

さて、そんなわけで、イベントは終了した。個人的には「どあほう」な結果にがっかりMAXではあるが、下山時の事故もなく、第一回の佐久ヒルクライムレースは成功に終わったと言って良いだろう。私が言うのもなんですがね。さらに、図々しくも、私評を書かせていただこう。少々上から目線なのは、年寄りのたわごとってことで、ご容赦いただきたい。

佐久では初開催のヒルクライムということで、実行委員およびJCAのスタッフさんたちは苦労も多かったことと思う。コースは、道も広く路面コンディションも良好でヒルクライム向きと言えるだろう。各チェックポイント&エイドステーションはわかりやすい場所なのはいいと思うが、スピードが乗る直線に設置するのはどうかと思う。私の速度なら問題ないが、通常のロードのスピードではドリンクを受け取るのも大変だろう。

コース全般で景観は悪いが、ストイックに走る人には関係ないので、よいことだと思う。今回、募集時に「初心者の方にも…」的なフレーズをどこかで見かけたような気がしたが、正直、現状では、全く初心者向きの大会ではない。レースであるので、タイム設定は重要であるが、後ろのほうからスタートする体力的に不利なクラスほど、制限時間が短いのは大問題。最後列からスタートする女性のフルコース参加者は、必然的に1時間55分以内に第3チェックポイントを通過しなければならない。これは相当厳しいと思う。出走順序が変えられるならば、チャンピオンクラスの次に、殺気立ったロードB、ロードCを出し、その後くらいに女性に出走してもらうのが、紳士的振舞いというものだろう。

私はDNFであったので、レース中のゴール付近の状態はわからないが、競技が終了するまで下山させないのは、正解だと思う。参加者にくつろいでもらうためのフードの提供は、よいアイデアだ。ただ待たせるのでは、間が持たないだろう。まあ、参加者が少ないことが、なせるわざだろう。競技途中で下山が始まると、後尾集団は、上りにおいて最も走りたくない、左カーブのイン側を走らされる。勾配がきつい場所などでは、相当につらいのだ。それを知ってか、知らざるかは不明だが、後から上る側からすると、ありがたい配慮である。

全体的なレース進行においては、時間が押す場面もあったが、おおむね良好であったと思う。ただ、ショートコースに参加した女性の友人の話では、最後尾の参加者のすぐ後ろから回収車が上ってきていて、かなりの恐怖を感じたそうだ。上りで自転車のペースに合わせるために苦労しているのだろうが、大きなエンジン音が聞こえることで、あおられているような状態になったそうである。彼女は、もうヒルクライムには出たくないと言っている。伴走車、回収車の距離のとり方も、参加者に負担をかけない配慮が欲しいところだ。

私がヒルクライムレースに参加するたびに危惧していること。それは参加者の年齢的裾野の狭さだ。正直、私も含めて、どこのレースでも最大勢力は男子ロードの40歳代、ジジイばっかりだ。ジジイが元気なのはいいことかもしれないが、若い人がいない、子供もいない、女性も少ない、それはイベント自体に未来がないと言うことに他ならない。今後のこの大会の方向が、ストイックな走り主体の「ヒルクライムレース」の方向に行くのか、自転車を媒介に広く参加者を集うような「サイクルイベント」になるのか、興味はある。しかし、佐久のヒルクライムは、人々が暮らす市街地から程近い場所での開催である。地元の高校生や中学生が、通学自転車で脚自慢に来るような大会になればいいのになあ…そんなことを思いながら帰路に着いた。

 


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