割れるトラブル

樹脂やガラス部品以外の金属部品が「割れる」トラブルというのは、あまりありません。修理の多い当店でも、数年に1回くらいです。スタータ関係の部品が多いですね。

写真はサベージ650のフライホイール。スタータに噛むリングギヤが欠け、ワンウェイのベアリングが割れています。「セルが回らなくなった」ということで入庫しました。厄介なのはギヤが欠けてしまうことで、欠けた破片を全て回収しなければ新しい部品を組めないのです。わずかは破片でも残してしまうと2次トラブルを引き起こすことになります。

こちらはギアそのものが、バックり割れた症例です。セローのクラッチバスケット根元のドライブギアです。たまにはセルではなく、キック始動しようと思ったら噛んでしまい、セル始動もできなくなった症例です。

こういったトラブルは、距離を走った車体に多い症状です。バイクのスタータ機構は、複雑なギアの噛み合わせと、ワンウェイクラッチにより構成されたものが多く見られます。距離を走ると、各ギアや軸受け部などが摩耗してガタが多くなることにより、破損や作動不良を起こすようです。

こういったトラブルは予防的な修理をすることはあまり現実的ではありません。そこそこの部品代と工賃のかかる作業ですので、「ちょっとおかしいな?」と思ったらすぐにバイクショップに相談した方が良いと思います。



バイクメンテナンスの基本って何でしょう?

hd002突然ですけど、たまに聞かれることがあるので、僭越ながら、書かせていただこうと思います。

それは…「ズバリ、洗車です!」何で?って思われるかもしれませんが、これが重要なんです。「ですよね!」って言える人は、メンテの基本がわかっている人ですよ。

バイクに乗ったら、まず洗車をする。洗車と言っても、塗装部品ばかり洗っているようではダメですよ。全ての部品を隅々まで洗う。汚れを落とし、飛び散ったチェーンオイルなどを拭き取り観察する。そうすることで、油脂類、冷却水の漏れや不足、部品の消耗や破損、ボルト類のゆるみや欠落、などに気付くことができるのです。気が付いたら、まずはそこを修理しましょう。終わったら、水分を飛ばすためにひとまわり走って、少しバイクを冷ましてから、カバーをかけてしまいましょう。はい!日常メンテナンス終了です。

洗いもせずに、特に何も見当たらないから、「とりあえず増し締めでもしておくか。」これが一番いけません! 「増し締めをしたら、ねじをなめてしまった。」とか、「ボルトを折ってしまった」など、よく聞きますよね。尻拭いをするのは我々バイク屋ですので、増し締めなんて、しないでください。「増し締め」というのは、「今、締まっているねじを、さらに強く締める」ということではないんです。さらに言えば、一般の方はする必要のないことです。車載工具でやるのも論外です。

「増し締め」は我々整備士が、法定点検の時や、整備をした後の確認のため、工具を当てて、適正なトルクで締まっているかどうかを確認する作業のことです。経験を積んだ整備士の手は、手がある程度のトルクを覚えてます。緩んでいれば、トルクをかけます。締めすぎて動きが渋いときは、緩めて適正トルクで締めます。締まっているものを、それ以上締めることはないのです。

ちなみに、なめてなくても、ボルトやナットには寿命があるんですよ。その話はまた今度。



H4とH4R~ヘッドライトバルブのお話~

prt039H4バルブとは、最も多くの車やバイクに使われているヘッドライトバルブのことです。安いもの、高いもの、白いもの、黄色いもの、車の用品店に行くと、いろいろなものが売ってます。ただ、”H4”と書いてあるものに関しては、全て互換性があり、取り付けはできます(車検に通るかどうかは別問題ですが)。ちなみに、H4Uと書いてあるバルブも通常のH4と互換性があります。Uが付いているバルブは、H4以前の丸い白熱球バルブにも対応している規格です。 続きを読む



キャブレターの話 その2

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水とサビが入り混じったガソリン

今回は、普通に運用されているバイクに起こりうるキャブレターのトラブルについて説明します。 キャブレターの中のフロート室はガソリンで満たされています。そのガソリンはタンクから来ています。キャブレター内部に物理的な汚れが直接浸入することはなく、汚れは全てタンクから来るのです。タンクの中のガソリンが汚れるのは、タンク内のサビ、洗車や雨、結露による水分の浸入などが主な原因です。エアプレーンタイプのキャップでしたら、給油口のまわりの水抜き穴が詰まっていると、洗車のあとに給油しようとキャップを開けたとたん、たまった水が盛大にタンク内に流れ込みます。

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キャブレターの話 その1

lo007最近のバイクにはほとんど使われていませんが、キャブレターは長い間、バイクのエンジンに混合気を送る機構として活躍してきました。我々、旧世代のバイク屋の修行時代の大半はキャブレターのオーバーホールで占められていたといっても過言ではありません。緑色に腐ったガソリンの強烈なにおいは、我々の「臭いの記憶」として、生涯消えることはないでしょう。

我々がキャブレターの話を始めたら、尽きることがないのですが、まずは、キャブレターの整備について書いてみようと思います。 続きを読む



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